■純米酒と本醸造
現在、お酒の種類にも大きく分けて二種類あります。
・ 本醸造(精米歩合70%以下で醸造用アルコール添加)
・ 純米酒(米、麹米、水のみで醸す)
本醸造とは、造ったお酒のもろみ後半に、工業的に大量生産された醸造用アルコールを添加し絞る方法です。
この考え方自体は江戸時代からあり、当時は焼酎を使い「柱焼酎」と呼ばれました。目的は酒質の強化と香気の固定・調整。切れのよいスッキリとした風味になりやすいものです。
昔のものの本には「風味しゃんとして足強く候」とあります。
この技術と考え方自体は、酒質の向上を図る大切な知恵ですが、現在使われている醸造用アルコールの質や、それを添加することによる有用菌の死滅などを考えると、「百薬の長」たる健康や体の為には一概に良いとはいいがたくなります。
また本醸造の酒粕は、アルコールによって微生物の活性を止めるため、各章でお話してきた有用菌の効能や料理への発酵目的の利用は出来なくなります。
それに対して「純米酒」は原料はお米と水のみですし、酒粕の中にはまだお酒を醸す中で活躍してくれたさまざまな菌が生きています。また風味も米本来の「うま味」「甘み」「コク」を素直に感じる事が出来ます。また「切れ」にしても自然な酵母菌由来の優しさのある「切れ」とも言えます。
もしお燗など、温めて飲むのであればこれは断然「純米酒」に軍配があがるものと自分は思います。なぜなら本醸造を温めると醸造アルコール特有のいわゆる「日本酒っぽさ」が鼻について、お米の香りを楽しむ余裕が無くなってしまうからです。
対して、純米酒はお燗する事によって、「花が開く」(本来の風味が際立つ)いわゆる燗映えする。とも言いますが、お米本来のやさしい風味が、ふんわりと立ち上ってきます。またこれによってその純米酒の、隠された風味や酒の造り方が、表面に立体として現れます。これは造り方によっては良くも、悪くも作用しますが、どちらにしてもお燗するとその酒の本来の姿が、現れます。
話が飛びますが、「冷や」とは、シチュエーションによって冷やしてさらりと飲みたいときもありますが、逆に言えば本来の姿が冷やす事によって隠される。ことにもなります。ゆっくりと丁寧に醸されたお酒ほど「お燗」によってよりゆたかに楽しむことが出来ます。
「お燗」と「冷や」の話はまた別の機会に譲ることにします。
これはお酒に対する嗜好の問題ですが、微生物や、身体のことを考えると純米酒にはやはり命にたいする優しさがあると言えるでしょう。
また「酒は百薬の長」と言うのならばそれは「純米酒」以外には、考えにくい所でもあります。
しかしそもそも「酒」は米だけなのだから、わざわざ「純米」というのが妙な気もしますが・・・。
酒は純米。燗ならなお良し